認知症について知ること

年齢が高くなると物覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。こうした『物忘れ』は脳の老化によるものです。
しかし認知症はそういった老化による物忘れとはちがいます。例えば、今朝、朝ごはんを何を食べたかをはっきり思い出せないのは、物忘れ。朝ごはんを食べたことを忘れてしまったりちょっと前の記憶がすっかり抜け落ちているのは認知症の疑いがあります。

認知症は、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる状態をいいます。そして認知症が進行すると、だんだんと理解する力や判断する力がなくなって、社会生活や日常生活に支障がでてくるようになります。

資料提供厚労省ホームページより

認知症の種類

認知症とは

いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりしたためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態のことを指します。 現在65歳以上の方の4人に1人が認知症とその予備軍になっているといわれていて、90歳以上の方は2人に1人の高い割合になっています。2025年には、65歳以上の3人に1人に増えるといわれています。超高齢社会の抱える問題はこれから益々大きくなります。また、最近注目される若年性認知症については、正しくは18歳以降44歳までに発症する認知症を若年期認知症と呼び、45歳以降64歳で発症するものを初老期認知症と呼びます。若年性認知症についても今後増える割合となっております。 認知症にはいくつかの種類がありますが、主なものとして、以下の4つが挙げられます。1.アルツハイマー型認知症 2.脳血管性認知症 3.レビー小体型 4.その他(前頭側頭型認知症等)このうち約50%はアルツハイマー型認知症が原因で、約20%は脳血管性認知症によるものとされています。一般的に認知症=アルツハイマーと認識をされる方が多いですが、それぞれ症状や適切なケアに違いがあります。認知症の種類を理解し、適切な対応を行う必要があります。

認知症の症状~中核症状と周辺症状~

脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下など中核症状と呼ばれるものです。これらの中核症状のため周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って、うつ状態や妄想のような精神症状や、日常生活への適応を困難にする行動上の問題が起こってきます。これらを周辺症状と呼ぶことがあります。このほか、認知症にはその原因となる病気によって多少の違いはあるものの、さまざまな身体的な症状もでてきます。とくに脳血管性認知症の一部では、早い時期から麻痺などの身体症状が合併することもあります。アルツハイマー型認知症でも、進行すると歩行が拙くなり、終末期まで進行すれば寝たきりになってしまう人も少なくありません。

中核症状 記憶障害

人間には、目や耳が捕らえたたくさんの情報の中から、関心のあるものを一時的に捕らえておく器官(海馬、仮にイソギンチャクと呼ぶ)と、重要な情報を頭の中に長期に保存する「記憶の壺」が脳の中にあると考えてください。いったん「記憶の壺」に入れば、普段は思い出さなくても、必要なときに必要な情報を取りだすことができます。 しかし、年をとるとイソギンチャクの力が衰え、一度にたくさんの情報を捕まえておくことができなくなり、捕まえても、「壺」に移すのに手間取るようになります。「壺」の中から必要な情報を探しだすことも、ときどき失敗します。年をとってもの覚えが悪くなったり、ど忘れが増えるのはこのためです。それでもイソギンチャクの足はそれなりに機能しているので、二度三度と繰り返しているうち、大事な情報は「壺」に納まります。 ところが、認知症になると、イソギンチャクの足が病的に衰えてしまうため「壺」に納めることができなくなります。新しいことを記憶できずに、さきほど聞いたことさえ思い出せないのです。さらに、病気が進行すれば、「壺」が溶け始め、覚えていたはずの記憶も失われていきます。

記憶面

記憶力の中でもとくに記銘力障害、いい換えれば「さっきのことが思い出せない」ことが目立ちます。たとえば「夫婦で会話中に電話が鳴ったので、奥さんがそれに対応して数分後に再び席についた。そこで先刻の話題に戻ろうとしても、ご主人はその内容を思い出せなかった」というような例が典型です。また、すでに冷蔵庫にたくさん入っている食品を繰り返して買うような記憶障害の現れ方も少なくありません。

いわゆる失語、失行、失認

失語とは、言葉の理解ができないこと、しゃべりたい言葉がしゃべれないことです。失行とは、運動機能に関する障害はないのに、意味のある動作、たとえば「くわえたタバコにライターの火をつけること」ができないような障害をいいます。失認とは、感覚に関した機能は損なわれていないのに、対象を正しく認知・認識できないことです。よくあるのは、方向感覚の悪さ、何度も行ったことのある娘の自宅を訪ねようとして道に迷うような例です。

実行機能障害

計画をしてその準備をし、首尾よくこなしてゆく能力、いい換えると「段取り能力」のことを実行機能といいます。そのような障害の典型例として、女性なら、料理のレパートリーが減り、限られたメニューを繰り返しつくる傾向がみられます。

認知症の精神症状・行動異常

多くの家族は、記憶など認知機能の障害ではなく、こうした問題ゆえに受診を決心されます。暴言・暴力、徘徊・行方不明、妄想などが問題になりやすいものです。こうした問題は数カ月から数年にわたって持続し、在宅介護ができなくなる直接因になりがちです。なお、それぞれの認知症性疾患には特徴的な症状があります。たとえばレビー小体型認知症では特徴的な幻視や寝ぼけ症状、ピック病なら万引きなど反社会的などが特徴的です。