病気だからとあきらめないで。あなたのやりたいことは何ですか?

「患者さんやご家族の希望を支援する」
それは、クリニックの理念にも掲げられる大事なことです。
人生の目標は
ただ安全に何もなく時間を過ごすことではないと思っています。
その一人ひとりの人生を輝かせる何かを行なったり
喜びや楽しみを感じるために時間を過ごすのではないでしょうか。

病いを抱えながらも
家族とのつながりを感じること、
自分の好きなことをすること、
自分の居場所だと感じられる場にいることなど、
やりたいことにチャレンジすることができるはずです。

ご本人やご家族が希望することをできるだけ叶えるために
さまざまな専門家と共にサポートしていきたいと思っています。


チャレンジストーリー1
温泉でカラオケに行きたい認知症のおばあちゃま

腰が痛くて、自宅の2階から半年前から下りていなかったおばあちゃま。
もともと温泉とカラオケが大好きなので、
久しぶりに連れて行ってあげたいというのが家族の強い希望でした。
老舗温泉旅館のご協力で、その希望は現実に。
その希望を支えた学生インターンシップ生は
「旅のしおり」を作成して、小さな旅を盛り上げました。

おばあちゃまは、大家族みんなをつれて温泉に。
大きな声で歌を歌い、
最初には笑い、最後には嬉し泣き。
とても楽しい時間を過ごすことができ、
その後おばあちゃまが亡くなった後も、
何度も家族の話にのぼるのはあの時のことでした。


チャレンジストーリー2 
寝たきりで酸素をしながらでも、トワイライトエクスプレスに乗りたい

もともと鉄道好きで、時折の特急旅行を楽しみにしていたご夫婦でした。
カシオペアに北斗星…、
でも「幻のチケット」と言われ、なかなかチケットが手に入らない
トワイライトエクスプレスだけは今まで乗ることができませんでした。

共に旅行を楽しんでいた夫が
今では誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、酸素吸入をしながら自宅で寝たきりに。
奥さんは直感で「こんな調子では、もう残りの人生は長くないかもしれない。夫の命が尽きてしまう前になんとかトワイライトエクスプレスに乗って、北海道まで行かせてあげたい」と思いました。

「死んじゃった後にどんなに供養してもお父さんには届かない。
それなら今生きているうちに、いろいろやってあげたいの。
生前供養だと思っているのよ」
夫の発病からいろいろな苦悩を乗り越えただろう奥さんは
明るい調子でそんなことをおっしゃいます。

事情を知ったJTB一宮店の皆さんが
毎日毎日チケットの入手のために端末を叩いてくれて
なんとクリスマスの日に、キャンセルが出て
行くことができることになったのです。
クリニックの看護師が2本の酸素ボンベを担いで同行。

岐阜羽島から新大阪まで新幹線で、
大阪から札幌までトワイライトエクスプレスで夜間に乗り、
帰りは飛行機で2泊3日、久しぶりの夫婦の旅。
大満足な旅に、「次は九州のななつ星へ!」と笑うご夫婦でした。

帰ってきて毎日の生活に慣れた頃、ご主人は突然の心筋梗塞でお亡くなりになりました。
「あの時、勇気を出して行っておいて本当によかった」
奥さんは悲しみの中にも、悔いのない笑顔を浮かべました。